芝浦工業大学名誉教授 三浦昌生の「講義日記」

授業が終わったら日記を書く。題して「講義日記」。大学での授業回数は通算1998回まで到達。教壇に立つ大学教師の気持ちが伝われば‥‥。

環境工学Ⅰ 2011年度

第1506回 「第4回小テスト高得点者発表」

環境工学Ⅰ 2011年7月28日

第4回小テストの高得点者を発表したい。
第1回、第2回で満点だった学生は、今回またもや満点。健闘を讃えたい。
満点:R10025,R10039,R10055
96%:R10010,R10015,R10029,R10059,R10065,R10087,R10095,R10096
92%:R10006,R10019,R10023,R10024,R10047,R10053,R10070,R10082,R10084

小テストの時に、授業の感想を書いてもらった。
「勉強に時間をかけるほど成績が良くなるので、途中で楽しくなった」
「テストの高得点者を発表するため、テスト勉強に一層やる気が出た」
「広告や新聞を用いた説明で、数値の意味や見方を理解できた」
基本的な授業の進め方は学生に支持されているようだ。

震災の影響で室温に例年以上に気を配ったが、
「もう少し室温をあげてほしい」と書いた学生がいた。
空調の吹出口の真下や近くを避けて座るのはどうだろうか。

講義日記についてもたくさんの感想があった。
「過去の講義日記でどんな講義やテストをするかがわかり、
心の準備をして講義に臨めた」
「講義日記によって一方通行の授業でも積極的な姿勢へと変化した」
「講義日記で授業への取り組み方が変わり、前の方に着席するようになった」

最後の「!」も好評だ。
「最後の一言が『!』で終わるのが好きだ。前向きな強い一言であるし若さを感じる」
「これからも毎週読みたいです!」と「!」を使って書いた学生もいた。

ところで、こんな意見があった。
「いつも面白く楽しみにしていたが、1500回の時はこの授業のことが書かれていない更新で少しさみしかった」
この意見が伝えていることは、相手に関心を持つことの大切さだ。

講義日記は「教師は学生たちの様子にいつも関心を持っています」というメッセージ。
学生も教師が自分たちをどう見ているかを気にかけている。
そのことが「先生から見て自分ら学生がどう見えているかがわかった」
「今までは先生がどんなことを思っているかを知る機会がなかったので
新鮮で面白かった」という声につながる。

だから、自分たちのことに一言も触れられていなかったら、がっかりして当然だ。
これからも、教室の皆さんの様子にしっかり関心を持ち続けます!
お疲れ様でした。

第1505回 「学生はピンとこないという表情をしている」

環境工学Ⅰ 2011年7月25日

講義は今日で終わり。
「外断熱・内断熱」はとても重要なので、しっかり理解しようと伝える。
いつものとおり、教科書の図を書画カメラでスクリーンに映して説明に入るが、
教科書の図は壁の断面だけなので、断熱材の位置の違いを伝えにくい。
学生もどことなくピンとこないという表情をしている。

そこで、気がついた。
壁の断面の説明をする前に、建物全体の断面図を板書して、
外断熱と内断熱の場合の断熱材の位置を色の違うチョークで書けばよいのだ。
スクリーンに映した壁の断面が板書のどこにあたるかを説明すれば、
板書した図とスクリーンの図のつながりがすぐにわかる。

こういう風に、学生の反応をリアルタイムで捉えながら、
説明の仕方を工夫するには、なんといっても黒板とチョークが一番だ。
学生が理解したと実感できるまで、書き足していけばいい。
目の前で図が書かれていく臨場感も捨てがたい。
黒板とチョークは、機動力のある授業ツールなのだ。

その点、書画カメラはきれいだが、単調になりやすい。
毎週の授業で、スクリーン上を指すのに、
レーザーポインタを使わないで、指し棒を使うのもそのためだ。
ビシッ、バシッと指すことで、説明にメリハリがつく。

辞書によると、講義とは「学問の方法や成果、研究対象などの
内容・性質などを説き聞かせること」とある。
授業が単なる解説ではなく、講義になるよう努力しているのです!

第1503回 「私語を注意するコツ」

環境工学Ⅰ 2011年7月18日

先週、小テストの試験監督で教室内を巡回している時、気がついた。
冷房をつけると寒いと感じる学生がいて、冷房を止めたり弱めたりしているが、
冷房の冷たい風が吹いてくる場所は限られている。
だったら、そういう席をなくすため冷房を止めるのではなく、
その席を避けて学生に座ってもらえばいい。
「授業中でも席の移動は自由」と伝えて授業に入った。
でも、暑くて集中しづらいのか、私語が続いている。

授業中の私語の出方には二つのヤマがある。
授業開始後の10分間と終了間際の10分間だ。

授業を始めてすぐ、教室全体が落ち着かないのは仕方ない。
多少私語があっても自然になくなっていく。
ただ、放置すると私語がまわりに広がることもあるから油断はできない。
といって注意しすぎると教室の雰囲気を悪くしてしまう。

「もうすぐ授業が終わる」という解放感から終了間際も私語が出やすい。
こういう私語はまわりに広がることはない。
それにこちらも、ここまで授業をやってきたのだから、
最後に私語を注意して、後味を悪くしたくないという気持ちも働く。

私語を注意するコツは、まわりに広がりそうな私語だけを、
教室全体の雰囲気に気をつけながら簡潔に注意することだ。

「窓側の列の後の方、授業を受けようっていう気持ちになってるかなー?」
注意の仕方も前に比べたらソフトになったものだと自分ながら思う。
私語の注意の仕方も進化しているのです!

第1501回 「ここまで来たら、もうやめられない」

環境工学Ⅰ 2011年7月11日

授業の通しナンバーが1,500回を超えた。
記念すべき1,500回目は先週の金曜日1限の「環境システム概論」だった。
この講義日記を始めたきっかけは、20年前本学に赴任したときに、
「大学の先生は一生で何回ぐらい授業をするのだろうか」という
素朴な疑問を持ったからだ。

そこで、自分でそれを数えることを思いついた。
すべての授業に通し番号を振っていけばいいのだ。
授業に振った番号を記録するため、あわせて授業の日記をつけることにした。

A5版の能率ダイアリーノートにモンブランのボールペンを使って書いている。
1行あたりの文字数が25字程度。1回の授業について10~15行は書く。
文字数にすれば、250~400字は書いていることになる。
5行くらいで済ませるときもあるが、20行以上いろいろ書き連ねることもある。
研究室の書棚には、黒い表紙のノートが20冊並んでいる。

講義日記のノートは授業の前に、前週の分と前年の同じ週の分を必ず読み返す。
前週の分を読むと、今週の授業に引き継いだ事項を確認できるし、
前年の同じ週の分を読むと、前年の授業後にわかった改善点を把握できる。
今盛んに言われているPDCAサイクルを回しているわけだ。

前期に担当している科目は他にも大学院の科目や学部の演習科目がある。
学部の講義科目をブログや研究室HPにアップしているが、
すべての授業に通し番号を振って講義日記をつけている。
このブログにアップした講義日記の通し番号が連続していないのはそのためだ。

講義日記を始めたとき、大学教師の生涯授業回数は1,500回くらいではないかと
予想していた。でも、退職まであと10年を残して、それを超えてしまった。
ここまで来たら、もうやめるという選択肢はありません!

第1497回 「授業中に新聞記事を配る理由」

環境工学Ⅰ 2011年7月4日

7月に入った。電力使用制限令が発動された。
大口電力需要家は昨年のピークより15%消費電力を減らさなければならない。
大宮キャンパスも対象だ。

教室の空調を弱にして授業を始めた。
この季節の講義日記を読み返すと、冷房をつけた途端にくしゃみが聞こえ、
寒くなると何度か書いている。
暑そうにしている学生もいるが、冷房をつけると寒くなるのはわかっているので、
そのまま続けることにした。

「採光と照明」の章の2週目。窓からいかに太陽の光を取り入れるか。
節電の面から、特に今年は大切なテーマだ。
昨日の新聞の社説に、学会が照度基準を見直したことが載っていた。
さっそくコピーを配った。

授業中に新聞記事を配るのには3つのねらいがある。
第一に、教室で学習した事柄が新聞でも取り上げられていることを知り、
講義の内容が社会と関連していることを理解すること。
第二に、新聞にはテレビとは違った詳細な記事や論説が
載っていることを理解すること。
第三に、授業中に新聞記事を読むことをきっかけに、就職活動に備えて、
新聞を読む習慣を身につけること。

毎日少しずつ新聞を読むことで頭の中に知識の地層を作っておくと
就職の面接でも安定した受け答えができる。
就職活動を始めてから急に読み始めても間に合わない。
日頃の積み重ねが必要だ。

室温が上がって、テンションの下がった学生が増えてきた。
しかし教室を見渡すと、姿勢を正して授業に取り組む学生がいる。
そうした学生の姿に押されて、授業を続けた。
暑い中、皆さん、お疲れ様でした!
記事検索
プロフィール

kouginikki

カテゴリ別アーカイブ
タグクラウド
QRコード
QRコード
  • ライブドアブログ