芝浦工業大学名誉教授 三浦昌生の「講義日記」

授業が終わったら日記を書く。題して「講義日記」。大学での授業回数は通算1998回まで到達。教壇に立つ大学教師の気持ちが伝われば‥‥。

2012年05月

第1558回 「筋トレ型授業は専門家としての基礎体力づくり」

環境工学Ⅰ 2012年5月21日

首都圏で金環日食を見られる日。
7:35から自宅の玄関先で特殊メガネをかけて見た。
そのとき太陽が雲に隠れなかったのは本当に幸運。
太陽そのものが見えることにこんなに気を揉んだのも初めてだ。
その日の講義テーマは偶然、太陽の動きと日影のでき方だった。

第1回小テストの採点が終わった。
来週の授業の初めに成績上位の学生を発表できる。
小テストの出題形式が理解できたと思う。
あと3回の小テストも同じ形式の予定だ。

どの問題も、テスト勉強をしていないとまったく解けない問題だ。
逆に言えば、勉強した時間に比例して点数が上がる。
努力が確実に報われる出題形式だ。

その点で、この授業は筋力トレーニングのようなものだ。
毎週の授業と小テストで理論と知識を身につける。
2年生は専門家としての基礎を固める時期だから
このような授業が必要だ。

しっかりと勉強した事柄は記憶の底に残り続ける。
卒業する時には忘れてしまっていても、
仕事で必要になって思い出すこともある。
筋トレ型授業の良さに何年も経って気づくこともあるのだ。

筋トレ型授業は専門家としての基礎体力づくり。
そう思って、最後までがんばろう!




第1555回 講義への学生の態度は認知→関心→行動意志と展開

環境工学Ⅰ 2012年5月14日

小テストで講義日記へのアクセスについて聞いたら
3分の1の学生がアクセスしたことがあると答えてくれた。
感想を聞いたら、さまざまなコメントがあった。

「興味深かった。授業をどのように改善しているかが見えてきた」
「スクリーンと板書の使い分けなど工夫点がわかった」
「燃料をペットボトルでイメージするなど授業の注目点がわかった」
「毎回毎回まとめることで授業を風化させることがないようにしている」
というコメントがあった。毎週、昨年の講義日記をもとに
授業の方法を微調整している。
このことを認知してもらえたのはうれしい。

それは学生にもよい影響を与えているようだ。
「授業へ興味がわく」
「記憶を整理することができた」
「先生の本心が分かっておもしろい」
「読んでいて自分の考えに当てはまっていた」
「授業への思いが伝わってきた」
授業中には話さない教員としての思いを講義日記に書くことで
学生が授業に興味や関心を持つようになる。

それは自分への行動意志につながる。
「先生の努力にこたえていきたい」
「先生がどんなことを考えて授業をしているかがわかって、やる気がでる」
「『前の席に座る人の反応を見る』ことにははっとさせられた。
前の席に座っているからこそ、ちゃんとしたい」

商品への消費者の態度は、認知→関心→購買意志と段階を踏む。
学生のコメントを読むと、講義への学生の態度も
見事に、認知→関心→行動意志と展開している。

講義日記が学生の勉学意志を高めるのです!

第1552回 「身近なものの本数で体積をイメージできる」

環境工学Ⅰ 2012年5月7日

先週はパワーポイントに頼りすぎて講義が単調になった。
そこで、板書に切り替えて学生のテンションをキープした。
今日は、板書を駆使した講義になった。

まず、換気方式の3つのタイプを板書した。
それぞれの特徴を説明しながら、キーワードを書き足していった。
換気量の計算方法の説明では、基本の計算式を大きく板書して
それぞれの数字の意味を解説した。

さらに、1人当たり1時間に必要な換気量に、
授業で使っている教室の現在の在室人数をかけて
教室の必要換気量を計算する式を書いた。
一方、この教室の容積を概算して、換気回数の計算では、
換気量と容積の数字をチョークで結んで計算方法を解説した。

このように数式や図を次々と書き足していきながら解説するのは
パワーポイントではできない。板書だけの強みだ。
多分、学生は板書をノートに写すのに苦労したと思う。
以前の講義の板書はいつもこんな感じだったが、
写しにくいという声が出て、いつのまにかやめていた。
学生の写しやすさに配慮しつつ今後もこの「書き足し方式」も使いたい。

授業中に二酸化炭素発生量は0.02㎥/h・人程度と話した。
0.02㎥は20ℓ。20ℓといってもイメージしづらいので、
2ℓのペットボトル10本分と言えば、ずらりと並ぶペットボトルが
目に浮かび、明確にイメージできる。

ガソリンスタンドで、例えば40ℓ給油したときに、
2ℓのペットボトル20本分と考えると、車は相当な量のガソリンを
積んで走ることがよくわかる。

「身近なものの本数で体積をイメージできる」が今日のアドバイス。
理系の学生に役立つはず!

第1548回 「講義は教室の前方に座る学生向けに組み立てられている」

環境工学Ⅰ 2012年4月23日

毎週、教科書のコピーを書画カメラでスクリーンに映して解説する。
学生は教科書のどこを説明しているかがすぐにわかるし、
スクリーンを見るのに顔を上げるため眠気防止にもなる。
いいことばかりのような気がするが、この方法も欠点がある。
講義が単調になってしまうのだ。

もともと私は講義でパワーポイントを使わない。
情報量が多く画面もきれいだが、講義にメリハリがつかない。
だからといってパワーポイントをやめても、
書画カメラでスクリーンに頼り切っては同じことだ。

途中で講義が単調になってきたことに気が付いたので、
スクリーンから離れて黒板の前に立ちキーワードを板書した。
講義にアクセントが生まれ、学生の集中度も戻ってきた。
何年も授業をしているのに、学生のやる気を取り逃がしそうになった。
良い授業への道は果てしない。

ところで、講義をしながら学生の集中度を計れるのは
前の方に座っている学生の表情を読み取っているからだ。
つまり、前の方に座る学生は授業のバロメーター。
それを見ながら、授業の組み立て方を考えている。

最初の週に前方に座ろうと呼びかけたが、2週間で全体的に
後退してしまった。それでは教卓から表情を読み取りにくい。
今日のアドバイスは
「講義は教室の前方に座る学生向けに組み立てられている」
ということ。
同じ講義を受けるなら主体的になった方が面白い。
そのためには、前の方に座るだけでいいのです!
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